日本ゲーム大賞「アマチュア部門」での専門学校の評価・歴代受賞作
皆さんは、日本ゲーム大賞に年間作品大賞やゲームデザイナーズ大賞だけでなく、「アマチュア部門」が存在することをご存知でしたか?
東京ゲームショウのイベントステージで発表されるアマチュア部門では、多くの専門学校生が個人参加・チーム参加でゲーム作品の応募を行い、毎年高い評価を得ています。
今回の記事では、ゲーム業界の未来を担う若手ゲームクリエイターの登竜門というべきこのコンテストについてまとめました。
日本ゲーム大賞およびそのアマチュア部門とは
日本ゲーム大賞の概要
日本ゲーム大賞は社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催しているイベントで、2016年は「スプラトゥーン」が、2017年には「ゼルダの伝説」が年間作品部門の大賞を受賞しています。
1996年より開始され、20周年を迎えたその歴史については、次のページなどにまとまった情報が掲載されています。
~受賞作品・受賞者を通してみるゲームの歴史~ 日本ゲーム大賞20年史
アマチュア部門の概要
日本国内在住のアマチュア法人・団体・個人に応募資格があり、それらが制作した製品化されていないオリジナルの応募作品が選考対象となります。
特徴として、プレイアブルな作品の提出が求められ、1次審査としてプレイ映像の視聴審査が行われ、2次審査としては試遊審査が行われ、最終審査で各賞が選出されます。
評価基準としては、「コンセプト」「完成度」「プログラム」「グラフィック」の4つが提示されていますが、最終審査員のコメントなどを見ると、「コンセプト」に当たるものとして企画のアイディアや、「完成度」に当たるものとしてユーザーインターフェースやチュートリアルの分かりやすさなどのより実践的な項目も評価の対象となっているようです。
また、今回過去の受賞作などを調べていて興味深いと感じたのは、2016年の最終審査員からの講評にも表れている通り、留学生のいるチームの参加も多く高い評判を得ているということです。
団体、個人応募の何れにも外国から日本に来てゲームづくりを学んでいる学生さんの作品が受賞作品に選ばれている事
過去5年間の参加作品数の推移
282作品(2013年)
315作品(2014年)
285作品(2015年)
329作品(2016年)
409作品(2017年)
毎年300作品前後の応募数がありましたが、2017年は400を超える応募が集まっており、アマチュア部門の盛り上がりが感じられます。
各年のテーマ
2014年以降、毎年、作品のテーマが設定されているのも日本ゲーム大賞「アマチュア部門」の特徴です。
2014年:「動き」
2015年:「時間」
2016年:「流」(流れる・流す)
2017年:「はさむ」
充実した最終審査
日本ゲーム大賞のアマチュア部門に触れる上で欠かせないのは、最終審査の豪華さだと思います。
大手ゲーム会社・ゲーム雑誌が協力しているだけでなく、最終審査にまで残った各作品へのフィードバックも、第一線のプロの立場から見た非常に質の高いものだと感じました。
ここでは一部のコメントの抜粋しかできませんが、ゲーム系の分野への進学・就職を希望している皆さんは、是非最近の受賞作の紹介やそれに対して最終審査員がどのようなコメントを行っているかなどを確認してみてください。
最終審査員の所属会社・氏名・代表作
2017年の場合
プレゼンター所属会社 | プレゼンター(敬称略) | 代表作 |
株式会社ディー・エヌ・エー | 異儀田 諭 | 「野球つく」シリーズ 「サカつく」シリーズ |
「龍が如くモバイル」 「プロ野球ロワイヤル」 ディレクター | ||
グリー株式会社 | 今井 仁 | 「アナザーエデン」「武器よさらば」 開発担当 |
株式会社コナミデジタルエンタテインメント | 岡村 憲明 | 「メタルギアソリッド ポータブル オプス」 |
「スーパーボンバーマン R」 | ||
「ゾーン オブ エンダーズ」 プロデューサー | ||
株式会社スクウェア・エニックス | 岡山 博紀 | 「Kingdom Hearts χ」シリーズ |
「FLAME×BLAZE」 プロデューサー | ||
株式会社セガゲームス | 阪本 寛之 | 「龍が如く」シリーズ ディレクター |
株式会社バンダイナムコエンターテインメント | 玉置 絢 | 「サマーレッスン」シリーズ プロデューサー・ディレクター |
株式会社KADOKAWA | 千木良 章 | 電撃PlayStation 副編集長 |
株式会社Gzブレイン | 林 克彦 | 週刊ファミ通 編集人・編集長 |
審査コメントの抜粋
株式会社バンダイナムコエンターテインメント 玉置 絢氏
一番最初に目を見張ったところは、とにかくプレイすることの気持ち良さに対しての研究がすごいということです。
その点が一番分かりやすいのは、敵を倒した瞬間に画面が一瞬止まるようになっていて、ポイントのほうに目が行くようになっています。格闘ゲームなどでダメージが入ったときに一瞬画面が止まったりする、ヒットストップという技法と同じ技法が使われていたりします。どういうことをしたらプレイヤーが気持ち良く遊べるかというのを、既存の色々なゲームからかなり吸収して、それを自分のゲームの中に取り込んでいこうという気合いが見られるのが、まず一番最初に思った事です。
次に、このゲームの最後の目的はボスを倒すことですが、ただボスを倒すのではなくて、このゲームの最終目的は、ボスを倒して倒したボスの前で自撮りをすることですとチュートリアルに出てきます。
そういうことを思いながら、このキャラクターは戦っています。ボスを倒すのが目的ではなくて、ボスを倒して、「イエイ、こんな写真、みんな撮れないでしょう」って自撮りをしたりと、そういうちょっと変わったキャラクター設計が入っている。こういうセンスの良さはなかなかみんなが持てるものではないので、この作品のプレゼンターをやりたいなとずっと思っていました。
株式会社スクウェア・エニックス 時田 貴司氏
この『Elec Head』は、ロボットの頭を投げながらステージを進むという
非常にインパクトのあるコンセプトの作品です。投げた頭からも電流が流れるようになっていて、頭を切り離せる
短い時間のうちにその頭を取り戻しながら進みます。非常にインパクトがありながらも、シンプルなシステムと世界観
「頭を投げる」というギミックを使ったステージデザイン、レベルデザインが
すごく丁寧に作られていました。チュートリアルがなくても自然とゲームのルールを覚えていけるところが
非常に丁寧につくられていると特に感じました。
株式会社バンダイナムコスタジオ 村野 大輔氏
まず、大人数のチーム制作は個人制作とは大きく異なって
難しい点があります。それは一旦コンセプトを決めても制作していく中で
「これは違うのではないか」とか、「こっちのほうが面白いのでは」とか
様々な意見が出て、結局のところゲームのコンセプトがだんだん
丸くなっていってしまうことです。それはプロの現場でもよくあります。しかし、この「10動説」はテーマがあって、コンセプトがあって、
ゲームプレイがあってと決めた内容が最後まで丸くならないで
新しい斬新なコンセプトのままゲームとして完成したのではないかと
思います。そのあたりは、チームとしてお互いに譲れる部分、譲れない部分が
あったと思いますが、そのコンセプトを台無しにすることなく、
しっかり作れたのは素晴らしいチームだったのではないかと思います。そのチーム力としての評価も、大賞にふさわしかったと思います。
本当におめでとうございました。
株式会社スクウェア・エニックス 時田 貴司氏
このゲームは、見た目もそうですけれども、
おしゃれで非常にアーティスティックな3人が作った、
アートを遊ぶゲームみたいな作品です。僕が一番気に入ったポイントは、マウスを両手で持って、
新しいコントローラーとして使ってしまうという、
コロンブスの卵的な発想がすごく面白かったと思います。回転の動きはプログラム的には物理計算をやっているので
よくこの人数でこれが実現できたなと感心しています。あとは、マウスのコントローラーでつかみが強烈だったので
中身ももっと尖ってもよかったかなと思います。3人とも非常に個性的で作風を既にもっていると思うので
この作風を伸ばせば強いチームになると思います。
頑張ってください。
株式会社セガ 細山田 水紀 氏
私はアクションパズルゲームをよく制作しているのですがその中で重要視する点としてテンポ感というものがあります。
このゲームは始まる時に、上からズドーンと演出が何回も入ります。
「くだらないなぁ(笑)」と個人的には思いますが、そういうテンポ感は 実は重要視されています。また、ブロックを切り離したり、つなげたりという要素自体は アクションパズルでよくある話なのですが、切り離す時に ピシーンと音を鳴らすなど、音やテンポ感がうまく表現されている 点が非常に良いと思いました。
ゲームが終わった後のカーソルの位置などが気になったりしますが いろいろと細かい演出をもっと加えて、トランス感がさらに増すと もっと良いゲームになるのではないかと思います。
今後に期待しています。頑張ってください。
受賞者コメントの抜粋
「Ultimate Selfy」、ECCコンピュータ専門学校、柴田 駿佑氏
個人賞をいただいて、とても嬉しいです。ありがとうございます。個人賞とはいっても、今回の制作では学校の先生方や友達やみんなに助けてもらったり、テストプレイをしてもらったりして、みんなの協力なくしてはここまで面白さを引き出すことはできなかったと本当に思うので、大変感謝しています。嬉しいです。ありがとうございました。
「Elec Head」、日本工学院専門学校、パグンタラン イチロ デコロンゴン氏
私は個人作品として参加したのですが、学校の皆様のサポートや、
友人たちがデバッグ等協力してくれて、色々な意見も採り入れて
進めてきたので、協力していただいた皆さんに本当に感謝いたします。今回、私自身初参加で初めてで戸惑った部分が多くありましたが
学校の皆さんのサポートがあったおかげで、こうしてここに立つことが
できたと思っています。
「LIFT」、HAL大阪、BRIGHT CONNECTION チーム
昨年、このアマチュア部門に見学で来ていて、
先輩方が受賞するところを見させていただきました。
そのときの輝かしい先輩たちを見て
「来年こそは自分もここに立ってやる」と思いながらここに来て
何とかここに立てて嬉しく思います。
「TRANTH」、HAL大阪、ロコニロ Project チーム
私たちが今回制作したゲームでは、世界観と操作感、それから爽快感を重要視して作りました。
ですから「テンポよく動かせた」と言ってもらえることが最大の喜びであります。チーム内でもユーザーインターフェイスIがイマイチと散々 言われており、まだまだこれからも頑張っていきますので 今後も温かい目で見ていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
過去5年間の歴代受賞作・所属学校
2017年
受賞名 | タイトル | プラットフォーム | 学校名 | 受賞者・グループ名 |
大賞 | トレースペーパー | PC | ECCコンピュータ専門学校 | トレース製紙工場 |
優秀賞 | Ultimate Selfy | PC | ECCコンピュータ専門学校 | 柴田 駿佑 |
DOOR | PC | バンタンゲームアカデミー東京校 | 扉工務店 | |
トレースペーパー | PC | ECCコンピュータ専門学校 | トレース製紙工場 | |
ぱくロール | PC | 国際情報工科自動車大学校 | チーム「ぱくロール」 | |
Pixmash | スマートフォン/タブレット | HAL名古屋 | Explon | |
佳作 | スクラップファクトリー | PC | ECCコンピュータ専門学校 | チームスクラップファクトリー |
TWIN CANDLES | PC | 日本工学院専門学校 | 髙木 雄太 | |
はさめ ぴよちゃん | PC | ECCコンピュータ専門学校 | ぴよちゃん保護団体 | |
Pechantet | スマートフォン/タブレット | HAL大阪 | ジブンデ!! | |
個人賞 | Ultimate Selfy | PC | ECCコンピュータ専門学校 | 柴田 駿佑 |
2016年
受賞 | タイトル | プラットフォーム | 学校名 | 受賞者名・グループ |
大賞 | Trail | PC | HAL大阪 | Project Trail |
優秀賞 | Elec Head | PC | 日本工学院専門学校 | パグンタラン イチロ デコロンゴン |
Trail | PC | HAL大阪 | Project Trail | |
FACTORIAN | スマートフォン/タブレット | 名古屋工学院専門学校 | 古川 貴士 | |
FLOLF | PC | HAL名古屋 | 野津 宗一郎 | |
Milky Star Way | PC | HAL名古屋 | 橋本 龍弥 | |
佳作 | ELECT COLLECT | PC | HAL大阪 | No Plan |
Gossip Quest | PC | 名古屋情報メディア専門学校 | Team Gossip Quest | |
Ding Dong War | スマートフォン/タブレット | HAL大阪 | Project D.D.W | |
FLOWer | スマートフォン/タブレット | ECCコンピュータ専門学校 | 華 GAMES | |
流闘 | スマートフォン/タブレット | HAL大阪 | チーム大陸 | |
個人賞 | FLOLF | PC | HAL名古屋 | 野津 宗一郎 |
2015年
受賞 | タイトル | プラットフォーム | 学校名 | 受賞者名 |
大賞 | 10動説 | PC | 東京工芸大学 | Alice と Teles |
優秀賞 | いれかえてーしょん | Wii | HAL大阪 | チーム T.P.D |
Chase the Sun | PC | 日本工学院八王子専門学校 | Photosynthese | |
Tick Bomb | スマートフォン・タブレット | トライデントコンピュータ専門学校 | 生駒 祥平 | |
TWINS | PC | 清風情報工科学院 | 松本 拓之 | |
10動説 | PC | 東京工芸大学 | Alice と Teles | |
4D FOLLOWERS | PC | 専門学校国際情報工科大学校 | Project 4D FOLLOWERS | |
佳作 | an After image | スマートフォン・タブレット | HAL名古屋 | Team.- EDEN - |
Chrono Bastille | PC | 学校法人コンピュータ総合学園神戸電子専門学校 | 川添 伸一 | |
Time Bomb | スマートフォン | ECCコンピュータ専門学校 | Quad | |
ヒカゲモノ | PC | バンタンゲームアカデミー | チーム カゲタロウ | |
個人賞 | TWINS | PC | 清風情報工科学院 | 松本 拓之 |
技術特別賞 | TWIDIVER | PC | HAL大阪 | RTableProject |
2014年
受賞 | タイトル | プラットフォーム | 学校名 / 受賞者名 |
大賞 | FRAMING | DS | HAL大阪 / OneBIT |
優秀賞 | うごかんどう | スマートフォン/タブレット | ECCコンピュータ専門学校 / うごかし隊 |
STAPPY | PC | ECCコンピュータ専門学校 / Human Complex | |
ディガリス | DS | HAL大阪 / プロジェクトディガリス | |
FRAMING | DS | HAL大阪 / OneBIT | |
LIFT | PC | HAL大阪 / BRIGHT CONNECTION | |
佳作 | ごほろぼ | DS | HAL大阪 / ごほろぼProject |
さんすうぱずる | PC | トライデントコンピュータ専門学校 / 鈴木 大輝 | |
数学と流れ星 | スマートフォン/タブレット | 岡田 忠憲 | |
TON | PC | 東京工芸大学 / team.CHAW | |
はにかむ | スマートフォン/タブレット | 名古屋工学院専門学校 / はちのこプロジェクト | |
PluSpear | DS | HAL大阪 / Project PluSpear | |
個人賞 | 数学と流れ星 | スマートフォン/タブレット | 岡田 忠憲 |
2013年
受賞 | タイトル | プラットフォーム | 学校名/受賞者名 |
大賞 | Toy Revo | DS | HAL大阪 / Team Toy Revo |
優秀賞 | Re | DS | HAL大阪 / PROJECT Re |
Toy Revo | DS | HAL大阪 / Team Toy Revo | |
TRI | DS | HAL名古屋 / TEAM TANDS | |
TRANTH | PC | HAL大阪 / ロコニロProject | |
モノクロルートクリエイター | PC | HAL大阪 / Project Monochrome | |
佳作 | 画針 -0.001里の道- | スマートフォン・タブレット | 名古屋工学院専門学校 / GPU_RETURNS |
クリエイト&クライミング | PC | HAL大阪 / 山内 亮磨 | |
CHAIN | PC | HAL大阪 / A-Mail PROJECT | |
Line Slash | DS | HAL大阪 / ひねくれん | |
特別賞 | Food Practice Shooter | PC | 小坂 崇之 |
まとめと、ゲーム制作を学べる学校の資料を無料で集めるお勧めの方法
いかがでしたでしょうか?
スペース的に各受賞作を並べるだけになってしまったのですが、本来は1作品ずつ、ゲーム内容と最終審査員からのコメント、受賞者のコメントを掲載できていればとも思いました。
ゲームのビジュアルなども確認できますので、是非ゲーム大賞の元ページもご覧になっていただければと思います。
また、今回の記事を読んで、入学してみたい専門学校の候補がいくつか浮かんだ方も多いかと思います。
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次世代のゲーム作品を生み出していく皆さんのお役に立てたなら幸いです。